研究概要 |
ウイルスは、特定の細胞に感染し、効率的に遺伝子発現を行い、条件によっては細胞傷害を起こすことなく持続感染を引き起こす。すなわちウイルスは、効率的に外部から新たな遺伝子を導入できるベクターである。このようなウイルスの性質を利用して開発されたベクターを用いて実際に、遺伝子治療や癌治療の臨床試験が行われている。しかしながら、現状では、どのウイルスベクターも長所と短所を併せ持ち、理想的なベクターが開発されたとは言い難い。本研究では、モノネガウイルスのゲノムを分節化するという斬新な発想で開発した新型のウイルスベクター(特許国際出願番号PTC/JP2006/314333)を用いて、これまでになかった理想的なウイルスベクターを開発するものである。主な用途として再生医療をターゲットにiPS細胞作製用、iPS細胞からの分化誘導用ベクターの開発を計画している。本年度の主要な成果として、(1)以前の手法と比較して、安全性、簡単さ、効率の全てにおいて、格段に良くなった新たな麻疹ウイルスベクター作製手法の開発に成功した。(2)in vivoにおいて効率的に遺伝子発現を行うためには、ウイルスベクターにワクチン株ではなく、野生株のウイルスポリメラーゼ遺伝子を用いることが重要であることを明らかにした。(3)iPS細胞作製に必要な4つの遺伝子(Oc3/4, Sox2, Klf4, myc)を発現する麻疹ウイルスベクターの作製に成功した。(4)現在、iPS作製実験を進行中である。
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