研究概要 |
インフルエンザは突然別の亜型である新型インフルエンザが出現してそれまで流行していた亜型に取って代わることがあり、これをインフルエンザパンデミックという。過去100年間に発生した3回のパンデミックは、1918年から1920年に起こったスペインインフルエンザ、1957-58年に発生したアジアインフルエンザと1968-69年に発生した香港インフルエンザがある。このうち最も深刻な被害をもたらしたのはスペインインフルエンザであり、日本でも40万人近くの死者を出したとされているがいくつかの地域で報告されておらず不明であったために、当時の人口動態統計を利用してSerfling法によるインフルエンザ関連死における超過死亡数を算出したところ41万3000人(95%信頼区間76,717-480,357)であった。さらに東北大学図書館に現存する関連する資料を「流行性感冒」、「パンデミー」などのキーワードから検索を行い、データベースを作成した。特にスペインインフルエンザ流行時のシベリアに出征した兵士における病理学的検討および当時の病理学的な検討の総説においても所見として病期により違いがあるとしており非常に臨床経過の早いものは出血性気管支肺炎、発病後7日ないし14日を経過したものでは融合性カタル性肺炎が、20日経過したものでは化膿性気管支肺炎および間質性気管支肺炎が観察されたと報告している。2つの剖検群(8例と34例)での死亡経過をみても明らかな偏りは見られないことから、その肺炎像は多彩であったことが示唆される。本データベースは来年度に公開に向けて整理を引き続き行う予定である。また公衆衛生対応の比較としてアジアインフルエンザ時における小学校および中学校閉鎖の効果を死亡数に対する影響により検討を行ったが明らかな効果は見られなかった。学校閉鎖の有効性は疫学モデルなどで指摘されているが、その開始時期については更なる検討が必要であると考えられた。
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