研究概要 |
インフルエンザでは突然別の亜型が出現して流行することがあり、これをインフルエンザパンデミックという。過去100年間に発生した3回のパンデミックのうち最も被害が大きかったのは我々の研究で41万3000人(95%信頼区間76,717-480,357)の超過死亡がみられた1918年から1920年に起こったスペインインフルエンザである。中国大陸に駐留していた関東軍では1918年から1920年の致死率(死亡者数を感染者数で除したもの)でみるとそれぞれ1000人あたり5.0、7.8、7.2人であり、流行時期が後になるほど高い数字であった。またパンデミック(H1N1)2009の発生を受けて、流行像がより近いと示唆された1957年のアジアインフルエンザあるいは1968年の香港インフルエンザの時期に発行された新聞記事を用いてデータベースを作成した。アジアインフルエンザでは学校閉鎖および流行状況に対する報道姿勢が今回と似ていること、新聞の報道数では初期の動向と非常に相関が高いが、12月以降のインフルエンザシーズンでは動向と必ずしも一致しないことが明らかとなった。研究についてまとめると、スペインインフルエンザでは大きなMortality impactがみられたが、過去に検討された病理像は現在のウイルス性肺炎と矛盾しないものであつたが、細菌性肺炎の関与も強く疑われた。また流行初期よりも後期において致命率が上昇していたことも明らかとなった。1918年以外のパンデミックも含めてもやはり公衆衛生上において重要な課題であったことと考えられた。
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