・質量顕微鏡によるアミロイド組織片直接解析法の確立を目的に、市販アルツハイマー病患者脳組織切片スライドを解析試料とし、コンゴーレッドあるいは標識抗□アミロイド前駆蛋白抗体により染色・画像化した病変部位を直接質量顕微鏡にて連続マススペクトルを測定し、βアミロイド前駆蛋白、βアミロイドペプチド(アミノ酸残基1-39~43)などの分子プロフィルを明らかにした。同時に、共存タンパク質であるミエリン塩基性タンパク(MBP)とトランスサイレチンとの存在比を明らかにし、Aβペプチド蓄積部位にはMBPの発現低下が認められ、脱髄が亢進していることを示唆する結果が得られた(専門誌に投稿中)。 ・得られたマススペクトル情報と染色画像情報に重ね合わせ視覚化し、上記βアミロイド分子の組織内局在を明らかにした。同時に、マススペクトルのイオン強度より量的変動を明らかにした。 ・既知のβアミロイド前駆蛋白、βアミロイドペプチド以外の分子プロフィルを明らかにした。 ・市販正常組織片スライドをin vitro弱アルカリ条件下、37℃放置し、経時的発現分子プロフィル、組織内局在、質的変動を明らかにした。我々が提唱した「S-sulfonation化」が進行している事が証明出来た。 ・市販組織切片スライドを用いた予備実験を踏まえ、我々がin vitro実験で得られたアミロイド原性を有する種々の翻訳後修飾TTRなどの分子プロフィルを明らかにし、アミロイド原性獲得やその生成/阻止機序など我々の仮説を分子レベルで立証した。アミロイド線維化の重要な第一反応が「S-sulfonation化」であり、その反応によって誘導されたデヒドロアミノ酸(α-acryl amino acid)がランダムポリマー形成→アミロイド線維化に重要な役割を果たしていることを明らかにした(専門誌に投稿・印刷中)。
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