シックハウス対策済みの建物で2-エチル-1-ヘキサノール(2E1H)の空気中濃度が高く、シックビル症候群(シックハウス症候群)、化学物質過敏症状、強い疲労症状が生じるが、病態は不明で、また、2E1H発生量を決定する要因にも不明な点が多い。今年度は、患者の客観的な生体指標及び予防対策を探索することを目的に、以下の検討を行った。まず、化学物質過敏症状とヒトヘルペスウイルス6型(HHV6)、 7型(HHV7)再活性化が関連するか明らかにする目的で、過敏症状を訴える患者7名から連続5日間唾液を採取し、HHV6、 HHV7のウイルス量を測定するとともに、アルデヒド脱水素酵素2型(ALDH2)の遺伝子多型を調査した。唾液中HHV6はほとんど定量下限値以下で、HHV7については個体差がきわめて大きく、いずれのウイルス量についても症状との関連は乏しいと考えられた。ALDH2多型は、ALDH2*1/1が4名、ALDH2*1/2が3名、ALDH2*1/2が1名であり、不活性型が多い傾向は認められなかった。 また、2E1H発生側の要因解明のために、コンクリートスラブに床材を直接貼付した直床構造の室内(n=45)とコンクリートスラブと床材が接触しない二重床構造の室内(n=51)との問で2E1H濃度を比較した。直床の室内での2E1H濃度の幾何平均値(最小~最大)は48.7 (0.4~3006)μg/m3であったのに対して、二重床の室内では55.7 (1.0~371)μg/m3であった。97室中9室で総揮発性有機化合物の暫定目標値(400μg/m3)を上回る2E1H濃度が検出されたが、いずれも直床の室内であった。
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