研究概要 |
我が国では、今後中皮腫患者の増加が懸念されているにもかかわらず、早期診断法や標準治療法は確立されておらず、有効な診断法および治療法の確立が急務とされている。その手段として5-aminolevulinic acid (ALA)の腫瘍集積性を用いた光線力学診断法(photodynamic diagnosis;PDD)およびポルフィリンのスクリーニングやクリアランスが新たな診断法となる可能性について検討を試みた。 本年度は動物実験としてFisher344雄性ラットを用いた。ラットに炭化ケイ素繊維(SiC)5mg/匹を腹腔内投与し、約30週後に投与ラットへALA塩酸塩-生理食塩水を経口投与した。1群は投与4時間後に解剖し、中皮腫の発症と蛍光を調べた。別群はALA投与直後から48時間後までの尿中ポルフィリン濃度測定を行った。対照群として非投与ラットにALA塩酸塩-生理食塩水を経口投与し、1群は蛍光を別群はALA投与直後から48時間後までの尿中ポルフィリン濃度測定を行った。 その結果、対照群に腹膜中皮腫の発症は無かった(非腫瘍群)が、すべてのSic投与ラットにおいて腹膜中皮腫が認められた(腫瘍群)。非腫瘍群および腫瘍群にALAを投与し、紫外線を照射した。その結果、非腫瘍群は腸管のみが、腫瘍群では腸管の他に中皮腫での蛍光を確認した。一方、投与されたALAは代謝され、 Uroporphyrin, Coproporphyrin1, Coproporphyin3として尿中に排出されたが、腫瘍群は非腫瘍群とクリアランスが異なり、明らかな代謝遅延が確認できた。本年度の研究成果としてまだ試験的ではあったが、 ALAを用いたPDDおよび尿中ポルフィリン測定が中皮腫の有効な診断法となる可能性を見出せた。
|