わが国の思春期における生体内酸化ストレス損傷に影響する日常生活要因について検討を行なうため、提示した研究デザインに従って測定・分析を行なった。つまり、平成20年度においては、生体内酸化ストレス損傷レベル測定のための採血と採尿、精神心理的ストレスレベルと日常生活行動実態を明らかにする無記名自記式質問紙調査を、福岡県内の公立高等学校2校の生徒に実施し、末梢血血漿における酸化ストレスレベルと抗酸化ストレスレベルの分析および質問紙調査票の分析を完全に終了している。血漿検体を用いた酸化ストレス・抗酸化ストレスレベルの分析の結果、血中のヒドロペルオキシド(活性酸素・フリーラジカルにより酸化反応を受けた脂質・たんぱく質・アミノ酸・核酸などの総称)のレベル、および血漿中抗酸化力レベルは、ほとんどの対象者で適正値であった。しかし、適正外の値を示した対象者も各々数名見出された。これらマーカーレベルに影響を及ぼす顕著な精神心理パターンを明確に見出すことは出来なかったが、日常生活要因との関連性分析を行なったところ、統計的に有意な相関関係が複数見出された。以上のような本研究知見を先行研究と比較すると、本研究で適用した酸化ストレスレベルと抗酸化ストレスレベルの分析結果には、少なくとも、被験者の年齢や健康状態により相当な相違があることが伺われた。すなわち、身体疾患や老化などには反応しやすいが、慢性疾や老化のリスクが低い思春期の場合は、定量値に差が出にくいことが示唆された。この点の重要性を明らかにするため、血中酸化ストレスと尿中酸化ストレス指標(8-OH-dGとm^7Gua)との相関分析を鋭意試みている最中である。
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