骨強度評価の要素の1つである大腿骨近位部の力学特性評価法として、米国Johns Hopkins大学Thomas J. Beck博士によって開発された大腿骨近位部構造解析(Hip structure analysis: HSA)が日本人に適用可能かどうかを確認し、可能であれば、HSA指標の日本人標準値を設定することを目的として本年度研究を実施した。 1. HSAに最適な撮影時肢位の決定と各指標の再現性の確認 (1)下肢位を股関節外転、内旋角度を変えながら測定し、HSA解析したところ、外転により骨幹部のROIの自動設定が不安定になり、手動での修正が必要になった。そのため、HSAの各指標値は相当変化した。内旋角度ではそれほど変化しなかった。そこで、外転は0度、内旋は大腿骨頸部の最大長が得られ、小転子が確認できる30度とした。 (2)健常ボランティア5人を対象に、1日1回、計7回の大腿骨近位部のスキャンを(1)で決定した肢位で行い、HSA指標の変動係数を算出すると、指標により5%から10%の範囲であった。予想通り、骨密度に比べるとかなり大きく、超音波骨評価指標と同レベルであった。 2. JPOSベースライン研究を利用したHSA指標の記述疫学的解析 (1)JPOS cohort研究の対象となった3地域におけるベースライン研究で得られてた大腿骨近位部のscan data 1600件のHSA解析を実施した。解析は終了したが、測定肢位に問題があったり、ROIがずれている解析が相当数あり、問題のないscanを抽出とROIの修正を実施中である。この作業は来年度初めまでかかるので、来年度の夏頃には日本人女性についての年齢階級別標準値が求められるよていである。
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