大腿骨近位部の力学的強度評価の1つである、米国Johns Hopkins大学Thomas J.Beck博士が開発した大腿骨近位部構造解析(Hip structure analysis : HSA)が日本人に適用可能かどうかを確認し、可能であれば、HSA指標の日本人標準値を設定することを目的として研究を進め、白人用と同じsoftwareで日本人のDXAイメージを解析可能であること、再現性は良好であること、撮影肢位の決定を行い、日本人にも適用可能であることを20年度に確認した。さらに、JPOS研究のbaseline dataを用いて日本人の年齢階級別標準値を出すために、約1600件の解析を進めた。 21年度は、予定通り約1600件の大腿骨近位部画像のHSA解析を夏に終了したが、調査地の地理的分布がやや南方に偏ることから北海道の1地区を追加し、計2445件の解析を実施した。その中から骨代謝に影響する疾患や服薬の既往のある者や大腿骨の画像上の問題のある者を除き、2107件を分析対象とした。これからHSA指標値の5歳階級別平均値を求め、日本人の年齢別標準値を求めた。また、20~39歳の有経者を取り出し、若年成人平均値とSDを求め、これを用いたT-scoreを算出し、加齢に伴う指標の横断的変化を明らかにした。すでに発表されている白人女性の値を比べると骨密度は大差なかったが、日本人の断面係数は20歳代で白人より7%低く、その差は加齢と共に拡大し、70歳代では25%となった。 以上の結果はHSA指標の日本人の幅広い年齢階級別標準値と若年成人標準値を初めて明らかにしたもので、日本人に対するHSAの適用に大きく寄与するものと考えられる。 本研究結果は日本骨粗鬆症学会で高得点演題に選ばれ、学会誌であるOsteoporosis Japanへの投稿依頼があり、現在印刷中である。また、国際学会に2件発表し、国際誌へも投稿中となっている。
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