研究概要 |
本研究では、化学物質に対する胎児・小児の脆弱性に係わる遺伝・エピジェネティック要因の解明することを目的に、疫学研究とin vitro実験を行っている。具体的には、既存の出生コホート内症例対照研究で、低出生体重/子宮内発育遅延(IUGR)・早産、出生時及び出生後の体重、身長、頭囲、胸囲の増加率をアウトカムとし、化学物質との関連の深い代謝能、免疫能、耐糖能に係わる遺伝要因、エピジェネティック要因との関連を個々に評価したうえで、交互作用の有無を検討している。内分泌かく乱化学物質曝露等の胎児期の環境要因の影響が大きいと考えられている疾患(習慣流産、多嚢胞性卵巣症候群、尿道下裂等)の症例対照研究で、これまで行ってきた遺伝子型・ハプロタイプの検討に加え、DNAメチル化等のエピジェネティック要因の影響を検討している。培養細胞等を用いたin vitro実験で、各種化学物質を投与し、化学物質投与による直接的な遺伝子発現、DNAメチル化及び生体内で生じた活性酸素種等の間接的な影響を検討している。 疫学研究においては、炎症性サイトカイン遺伝子多型と早産・低出生体重/IUGR・習慣流産との関連及びステロイド代謝酵素遺伝子多型と尿道下裂との関連を検討した。IL1A遺伝子rs1800587,rs17561,IL1B遺伝子rs16944,rs1143627,IL2遺伝子rs2069762,IL6遺伝子rs1800796の各一塩基多型(SNP)、ハプロタイプと早産・低出生体重/IUGR・習慣流産リスクに及ぼす影響を検討したところ、IL1A遺伝子rs1800587,rs17561多型及びこれらのハプロタイプと早産との関連を明らかにした。また、17B-ヒドロキシスデロイド脱水素酵素3型(HSD17B3)遺伝子rs4743709,rs2066474,rs2066476,rs2066480,rs2066479,ステロイド5a-還元酵素2型(SRD5A2)遺伝子rs523349の各SNP、ハプロタイプと尿道下裂リスクに及ぼす影響を検討したところ、HSD17B3遺伝子rs2066479と尿道下裂との関連を明らかにした。 in vitro実験では、核内受容体pregnane X receptor(PXR)について、化学物質の核内受容体活性を検出するためのアッセイ法の確立、確立されたアッセイ法を用いた農薬等における核内受容体活性の測定を行った。
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