研究課題
本研究では、化学物質に対する胎児・小児の脆弱性に係わる遺伝・エピジェネティック要因の解明することを目的に、疫学研究とin vitro実験を行った。疫学研究においては、既存の出生コホート研究及び不育症、多嚢胞性卵巣症候群、尿道下裂の症例対照研究で、化学物質との関連の深い代謝能、免疫能、耐糖能に係わる遺伝要因、エピジェネティック要因を検討した。環境要因としては、質問紙調査により、カフェイン摂取、喫煙・飲酒等の生活習慣、居住環境、ストレス要因等を検討した。コホート内症例対照研究において、CYP1A2遺伝子rs762551のAA型の非喫煙女性において、カフェイン摂取の多い群(〓300mg/d)では、出生時体重が有意に低下した(P<0.05)。また、不育症の症例対照研究において、喫煙・飲酒習慣を考慮しない場合には、CYP1A1遺伝子rs4646903のCC型の女性において、不育症のリスクが約2.8倍上昇し、COMT遺伝子rs4680のAA型の女性において、不育症リスクは、約0.4倍に低下した。喫煙習慣を考慮すると、喫煙群のCYP1A1遺伝子rs4646903のCC型の女性では、非喫煙群のTT型の女性に比べ、不育症のリスクが約6.1倍上昇した。これらの研究では、異物代謝酵素多型とカフェイン摂取・喫煙に関して、遺伝-環境相互作用が示唆された。核内受容体PXRはホルモン・糖などの化学物質の代謝・排泄に係わる転写因子であり、胎児でのエピジェネティック変化を引き起こす候補遺伝子でもある。本研究では、レポーター遺伝子アッセイ法を用いて、農薬200物質によるヒト(h)及びマウス(m)PXRアゴニスト活性を比較した。農薬200物質のうち106物質がhPXRを活性化し、93物質がmPXRを活性化することが明らかとなった。これらのPXR活性化には多少の種差が認められた。様々な化学構造を有する多くの農薬がPXRアゴニストであったことから、化学物質に対して脆弱性が指摘されている胎児・小児において、非意図的に曝露される農薬等の環境化学物質がPXRを介したエピジェネティック要因であることを示唆している。
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Journal of Sexual Medicine (in press)
International Journal of Epidemiology (In press)
Gynecological Endocrinology 28
ページ: 498-503