研究概要 |
スタチンは肥満細胞からのヒスタミン放出を抑制、あるいは肥満細胞の分化・活性を制御することで免疫調整作用を示す報告[J Leukoc Biol 2003,73:173-,Allergy 2006,61:281-]があり、これは免疫担当細胞における生体アミンとの競合的・協同的作用の存在が示唆される。そこで申請者は、スタチンによる消化管粘膜免疫への関与を明らかにするのに先立ち、代表的な生体アミンであるヒスタミンの消化管粘膜免疫への直接的関与について研究を行った。正常マウス小腸から採取した腸管上皮間リンパ球(IEL)をPMAとIonomycin刺激下でヒスタミン添加のうえ一次培養を行い、放出されたサイトカイン産生量を測定した。また各種ヒスタミン受容体アンタゴニストを添加して受容体サブタイプ別のIELでのサイトカイン産生応答についても調べた。ヒスタミンは濃度依存性にTh1系サイトカイン(IFN-γ・TNF-α・IL-2)とIL-4産生を抑制した。細胞内サイトカイン解析では、主たるIFN-γ産生細胞はTCR-αβ(+)IELであり、ヒスタミン添加によりTCR-αβ(+)IEL数は減少した。また選択的ヒスタミン受容体アンタゴニストを用いた実験結果から、ヒスタミンによるIELのサイトカイン産生制御はH_2受容体を介していることが示唆された。以上よりヒスタミンはH_2受容体を介してCD4(+)IELおよびTCR-αβ(+)IELのサイトカイン産生を制御し、腸管局所での免疫応答を制御する可能性が示唆された。スタチンはCD4(+)T cellでRANTES発現を介した局所粘膜免疫、特にTCR-γδ(+)IELのmodulatorとなりうる報告[PLoS One 2007,5:470-]があり、当該年度の研究成果は、免疫担当細胞における生体アミンとの競合的・協同的作用の存在を示すうえで意義あるものと考える。
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