研究課題
萌芽研究
C型肝炎ウイルス(HCV)の粒子形成は、小胞体での構造蛋白の生合成、プロセシングにより開始される。このうちエンベロープ蛋白E1、E2はN型糖鎖修飾を受ける事が知られている。多くのN型糖蛋白は小胞体内でミスフォールドした場合、小胞体品質管理機構ERADで分解処理される。EDEM1,2,3またER ManIは小胞体でのマンノーストリミングに関与しERADを促進する働きを持つ。HCVの粒子形成過程にERAD系が関与しているかを明らかにするため、HCV感染増殖細胞にERAD関連分子に対する各siRNAを導入し48時間後の培養上清を回収しnaive細胞に感染させた。その結果、EDEM1 siRNAでは、細胞内での感染性HCVレベルが低下する反面、培養上清中のウイルス量は2倍以上まで上昇することがわかった。EDEM3 siRNAでも培養上清中のHCVレベルが増加する傾向が観察された。ERAD関連遺伝子の転写誘導はIRE1-XBP1-UPRE経路によって制御されている。HCV感染に伴って小胞体ストレスが引き起こされる事が想定されるため、感染後のERAD関連遺伝子の発現がどのように変動するかを解析した。その結果、HCVの感染後48時間以降、感染量依存的にXBP1のフレームスイッチスプライシングが亢進すること、このXBP1 mRNAプロセシングと相関してEDEM1,2,3遺伝子の発現が上昇すること、が見出された。EDEM1の発現変化が最も顕著であり、感染前の約3倍まで上昇した。本研究により、HCVの産生制御に小胞体関連品質管理機構が関与する可能性が初めて示された。EDEM1がどのようにしてHCVの成熟化、粒子形成に関わっていくかを詳細に調べる事により、HCVの生活環、病態に対する理解が深まり新たな治療法の開発へもつながるものと期待される。
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