研究課題
萌芽研究
スフィンゴミエリン合成酵素(SMS1)ノックアウトマウス(以下、KOマウスと略す)が『痩せ』の表現型を示す原因を探るため、まず、高脂肪食負荷実験を行った。その結果、高脂肪食負荷条件下でもKOマウスの体重は増加せず、『痩せ』の表現型を示した。次に、代謝ケージを用いて、摂食量や酸素消費量を測定したが、これらの測定値(体重あたり)は野生型マウスと同程度であった。これらのことからKOマウスは病的に痩せていると考えられた。そこで、次に血糖値を測定したところ、KOマウスでは空腹時血糖値は有意に高い値を示した。また、グルコース投与時の血中インスリン量を測定したところ、KOマウスでは非常に低い値を示した。このことから、KOマウスはI型糖尿病のような病態を示すことがわかった。また、膵臓から膵島を単離し、高濃度グルコースを添加してインスリンの分泌を測定したところ、野生型マウスの膵島からのインスリン分泌量は3倍程度に増加したのに対し、KOマウスの場合にはほとんど増加しなかった。このことから、KOマウスの膵島では、スフィンゴミエリンが合成できないために、膵β細胞がインスリンを分泌できなくなっていると考えられた。一方で、インスリン投与実験によりインスリン抵抗性を測定したところ、予想に反して、KOマウスではインスリン抵抗性が低下していた(当初、KOではセラミドが小胞体やゴルジ体に蓄積するために細胞内のガングリオシドGM3などが増加してインスリン抵抗性が惹起されると推定していた)。恐らくは、KOマウスではグルコース刺激によるインスリンの分泌が著しく低下しているため、インスリン感受性が高感度に維持されているものと推定された。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Arterioscleros, Thrombosis, and Vascular Bology 28
ページ: 827-834