研究課題
慢性呼吸器疾患におけるグレリンの病態生理学的意義の解明と臨床応用を目指して、以下の研究を実施し、予想を越える成果を得た。1) ブレオマイシン投与による急性肺線維症モデルマウスを作出し、グレリン投与の有無でその生存期間を比較した。グレリン投与群では有意に生存期間の延長を認め、気管支肺胞洗浄液中の細胞数、炎症性サイトカイン濃度、肺障害マーカーの有意な減少を認めた。そして、肺障害に引き続いて生じる肺の線維化の有意な軽減も確認された。また、グレリン投与群では摂餌量、体重ともに有意にその減少が抑制されていた。これにより、摂食亢進だけでなく、急性肺障害とその後の肺線維症をグレリンの抗炎症作用が軽減し生存を延長させている可能性が示唆された。2) 慢性呼吸器疾患である進行肺癌患者の血漿中グレリン値(アシル化グレリンとデスアシルグレリン)を測定し、健常者に比較して高値であることを明らかにした。抗癌剤化学療法を施行し体重が減少した進行肺癌患者では、治療中の食事摂取カロリーと血漿グレリンの増加率が相関することを明らかにし、進行肺癌におけるカヘキシアや抗癌剤化学療法に伴う食欲の低下にグレリンが関わっている可能性を示した。これらの知見により今後癌カヘキシアや抗癌剤治療の新たな支持療法としてのグレリン治療の将来性が示された。3) 前年度から開始した慢性呼吸不全患者に対するグレリン投与の二重盲検無作為化比較試験を推進し、予想を越える症例のエントリーを得られた。二重盲検試験であるため、キーオープンまで結果の詳細な検討はできないが、25例の臨床試験を終了することができた。本研究では、既に慢性呼吸器疾患患者の栄養改善にグレリンやオクタン酸摂取が有効であることを示しており、さらに本年度の実績によりグレリンの医療応用に必要な基礎的、臨床的エビデンスの確立をさらに前進させたと言える。
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