研究概要 |
本研究の目的は、睡眠時無呼吸症候群(OSAS)患者を対象に、将来脳血管障害や心筋梗塞などのvascular eventsを発症する可能性が高いハイリスクグループを早期発見することにある。本法により、人間ドッグや健診受診者についても、生活習慣病の結果であるvascular eventsの発症リスクを早期に検討することが可能となる。 本年度は、OSASと診断した約60症例ならびに人間ドッグや健診受診者約200名を対象に検討した。OSASでは、活性化血小板マーカーの指標となる血小板自然凝集塊の出現頻度とOSAS重症度の関係を解析した。血小板自然凝集塊の出現頻度を、全血を採取後フローサイトメトリー法にて定量的に解析した。ポリソムノグラフィーで求めた無呼吸低呼吸指数(AHI)と凝集塊出現頻度の間には、軽症から中等症(30>AHI〓5回/時)では相関はないが(r=0.49,p=0.842)、重症(AHI〓30回/時)では有意な相関があった(r=0.61,p=0.004)。本結果はOSASが重症化するほど血小板自然凝集塊が出現しやすいこと、即ちvascular eventsの発症リスクが高まることを示唆する。人間ドッグや健診受診者を対象にした検討では、頚動脈エコーや血管のPWV測定の結果、動脈硬化性病変が強いほど血小板凝集能が亢進する傾向が認められた。 以上の成果を、平成21年の日本呼吸器学会総会などで発表、また平成22年の同学会シンポジウムでも発表する予定である。以上の臨床研究に加え、これまで申請者が行ってきた睡眠時無呼吸の動物モデルを用いた研究も継続し、低酸素・高炭酸ガス血症の呼吸循環動態への影響をまとめ、原著論文として平成21年に学会誌に発表した。
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