研究概要 |
申請者の教室で確立したヒト脳毛細血管由来内皮細胞株とヒト血管周細胞株、および一次培養ヒト神経膠細胞の3者による“Neurovascular Unit"のin vitroでの再構築モデルの確立を目的とし、各種培養条件によるモデル形成を試みた。培養皿上のゲル化した細胞外マトリックス中に、ほとんどin vivoと同一の脳毛細血管を再構築しようという世界に類のない試みであり,当初より主技の確立まで相当な時間を要することが予想されたが、初年度の段階では未だ安定したモデルの構築には至っていない。 方法:60mmプラスティック培養皿にラットI型コラーゲンを5mmの厚さでゲル化したものを作成、その上にまず脳毛細血管由来内皮細胞を播種した。同細胞には播種前にDiIをとりこませ、赤色蛍光を発することを確認した。約5日間の培養継続により、脳毛細血管内皮細胞は連続した管腔構造(vivoでの毛細血管網に類似する)をゲル内に形成した。この上に血管周細胞を播種し、3日間培養した。同細胞には播種前にDiOを取り込ませ、緑色蛍光を発することを確認しておく。血管周細胞は脳毛細血管内皮細胞の管腔構造の周囲にはりつくように生着したが、管腔構造の占める面積に対する至適な血管周細胞数(管腔構造外周の約半分の面積を血管周細胞が覆う)の確立には至っていない。 本研究の意義:ヒト血液脳関門由来細胞を用いてヒト脳微小血管に極めて近似したin vitro血液脳関門モデルを作製し、アミロイドの排泄機構を見ようという試みである。システムが確立すれば、血液脳関門でのアミロイド排出メカニズム探求の最良のモデルとなり、その意義は極めて大きい。残念ながら第2年度はモデル確立に更に時間を費やす予定で、最終目的であるアミロイド排泄機構の解明まではまだ更なる基礎実験の積み重ねが必要である。
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