本研究では、異なるシグナル伝達のバックグラウンドを有する複数の細胞株を利用し、レトロウィルスベクターによる発現クローニング法を行うことによって、がん化に関与するRas以外のさまざまな遺伝子の活性型変異を同定することである。本年度はIL-3依存性細胞株HF6(MLL-Sept 6で不死化した骨髄由来細胞株)をトランスフォームする活性で同定した、pim-1、pim-2、pim-3、Gad45a、PEPP2の解析を行った。Pimファミリーキナーゼ分子はHF6以外にもBa/F3細胞もトランスフォームしたが、Gad45aおよびPEPP2はいずれもHF6のみトランスフォームした。今年度は主にPEPP2のシグナルについて解析を行ったが、PEPP2の下流で抑制される遺伝子のうちPTENに注目した。興味深いことに、PEPP2の発現が極めて高い胃癌細胞株においてPEPP2をノックダウンすると、PTENの発現が上昇し、細胞増殖が抑制された。また、PEPP2を発現することにより自律増殖性を獲得したHF6細胞の増殖はPI3K阻害剤で顕著に阻害される。また富山大学の福岡先生が作製された高集積癌組織アレイを利用して、大腸癌、肺がん、乳がん、胃癌などで発現の高いがん細胞が認められることが判明した。
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