研究概要 |
我々は発がん関連miRNAの探索目的で、まず、MLL(Mixed Lineage Leukemia)関連白血病のがん化に関連するようなmiRNAの解析研究から開始した。この分野は最近急速に脚光を浴びてきており、従来の古典的遺伝子発現だけでは説明がつかなかった現象でも、non coding RNAによる発現調節によって、多角的にがん化機構を捉えることが可能になってきた。実際2008年末のアメリカ血液学会では早くも関連の発表が散見された。それらを列記すると、MLLキメラ遺伝子が原因のヒト白血病細胞では、miR-17-92 clusterの発現が上昇しており、関連のマウス白血病でも、miR-17-5p, miR-17-3p, miR-17-19b, miR-17-92, miR-18a, miR -19a, miR-20aの発現上昇が見られる。中でも、miR-17-5pは白血病幹細胞分画で発現が上昇しており、miR-17-19bはp21の発現低下を介して自己複製を促進する。また、miR-29aの発現上昇がヒト急性骨髄性白血病細胞や正常造血幹細胞で観察され、がん遺伝子と考えられる。他に、miR-142も造血腫瘍におけるがん遺伝子であると考えられる;という内容である。 我々は、4-hydroxytamoxifenの除去によりMLL-ENL(-ER)の遺伝子発現を消失させた時に、造血細胞において発現レベルが変化するmiRNAをmicroarrayにて探索した。その結果、miR-XXX(未発表データ)の発現上昇が観察され、real time PCR法にて、確認した。miR-XXX自体はがん抑制遺伝子的に働いている可能性が考えられる。即ち、がん遺伝子的に働く遺伝子の発現を抑える遺伝子である可能性が高い。実際、miR-XXXは白血病細胞の分化に伴って発現が上昇することがすでに報告されている。今後は、MLL-ENLでtransformした細胞におけるmiR-XXXの強発現や、造血細胞におけるmiR-XXXのノックダウンの表現型を解析し、その標的遺伝子を明らかにするとともに、他のmiRNAの探索も続ける予定である。
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