造血幹細胞をex vivoで増幅する技術として、今年度はヒトLnk機能抑制作用を有するドミナントネガティブLnkと膜透過性ペプチドの融合タンパクを発現するベクターを作製し、大腸菌に産生させ、最終的に膜透過性ペプチドと融合したドミナントネガティブLnkタンパクを精製した。 まず膜透過性ペプチドとして8つのアルギニンが並んだ配列RRRRRRRRをコードするオリゴヌクレオチドをドミナントネガティブLnkの5'端に結合させた膜透過性ドミナントネガティブLnkを作製した。ドミナントネガティブLnkとしてはヒト野生型Lnk368番目のアルギニンをグルタミン酸に置換しPHドメインとC末を削ったものを用いた。タンパクが発現するかどうかについてウエスタンブロットにて検討を行なったところ、予想されたサイズのバンドが検出された。上記膜透過性タンパクの精製および認識を容易にするためHis tag配列およびEGFPを付加したコンストラクトを作製し、大腸菌に産生させ、精製を行なった(R8-EGFP-Histag)。同様の手順で精製したR8を除いたタンパク(EGFP-His tag)を用いて、R8を付加したタンパクが機能するかどうかフローサイトメーターにて検討を行なったところ、R8を付加したタンパクのみ細胞内に取り込まれることを証明した。以上のことから培養上清に添加した細胞内タンパクが、細胞内に有意に取り込まれることを確認できた。現在、精製したドミナントネガティブLnkタンパクが機能するかどうかについて細胞レベルで研究を行なっている。
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