研究概要 |
若年型骨髄単球性白血病(JMML)は幼少期に発症する稀な骨髄増殖性疾患で、70%以上の患者でRAS、PTPN11、NF1遺伝子のいずれかの変異が同定されている。染色体レベルでは、患者の25%にモノソミー7、10%に他の染色体異常を認める。しかし、残りの患者では遺伝子変異は同定されず、染色体分析でも正常核型を示す。近年、マイクロアレイCGH法を用いて、JMML患者検体から3つの腫瘍抑制遺伝子候補(MIKI,TITAN,KASUMI)が7番染色体上に同定された。そこで、国際基準によりJMMLと診断された34人の患者(年齢中央値38ヶ月。男児21人、女児9人、性別不明4人。18人がPTPN11変異、2人がRAS変異、4人がモノソミー7を有する)を対象とし、これら3遺伝子の欠失および遺伝子変異の有無と、他の遺伝子変異との関連について検討した。[方法]初診時の骨髄細胞からDNAを抽出し、MIKI,TITAN,KASUMIのゲノムコピー数を定量した。更にこれら3遺伝子の変異解析を直接塩基配列決定法により行った。[結果]モノソミー7が検出された4例を除く30例中、MIKI,TITAN,KASUMI領域の欠失を2例に見出した。CGHアレイ解析の結果、このうち1例でKASUMI近傍の微少欠失が確認された。また、MIKI遺伝子のミスセンス変異が1例に同定された。これら3例中2例とモノソミー7が検出された4例中3例でPTPN11の変異が認められた。[考案]JMMLの発症、病期の進行にはPTPN11に加え、モノソミー7あるいは少数であるが染色体分析でモノソミー7として同定できない微小な遺伝子欠失が関与していることが明らかとなった。これは、JMMLの発症についても白血病の多段階発症モデルが当てはまるという主張を支持する知見である。
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