研究概要 |
従前、SIDSでは呼吸中枢へ投射する神経(セロトニン神経)が何らかの原因により病的に未熟であるとされてきた。今回の研究ではSIDS発症へのセロトニン系の関与をより明らかにするために、研究代表者が作成してきた「縫線核(=セロトニン神経の起始核)未熟ラット」を用い、児が深い眠りに陥った時のことを想定した、吸気CO2濃度変化に対するセロトニン系の反応性の異常がないかどうかを、SIDS児の豊富な司法解剖経験のある研究分担者・那谷雅之らと検討する。 二年間の研究計画のうちまず本年度は生きたラット(まずは正常ラット)で、ノーマルコンディションで脳内セロトニンのリアルタイム測定系(マイクロダイアリシス法)の確立を行った。 Wister系成熟ラット(生後10週齢)を麻酔下で脳定位固定装置に固定、剃毛の上頭皮切開、生体脳内埋め込み微少透析プローブ(エイコム社)を刺入しガイドカニューレによって歯科用セメントを用いて固定する。刺入部位は背内側延髄を目標に、ブレグマより尾側に11.5mm、正中線上で深さ10.5mm(Paxinos&Watsonの図譜による)。プローブは人工髄液(NaCl 147mM, KC14mM, CaCl2 1.9mM)を1.2μL/minでシリンジポンプで灌流、灌流液を5分毎に回収し回収液中のセロトニン濃度(即ち脳の細胞外液中のセロトニン濃度)をECD-HPLC装置(電気化学的検出による高速液体クロマトグラフィー、エイコム社)にて解析したところ、脳内セロトニンが検出できるようになった。来年度はこの系でラットを2チャンバーのボディープレチスモグラフに移し、吸気CO2濃度を0%,5%,7%,9%における濃度を測定する。この際、呼吸変化を頭部のチャンバーから得られた呼吸曲線を記録し、一回換気量、呼吸数、分時換気量、平均吸気流量をも解析する。吸気CO2濃度はCO2レギュレーターによって調節する予定である。
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