研究概要 |
研究代表者・成田正明は、乳幼児突然死症候群(SIDS)発症に関わる遺伝的因子(セロトニントランスポーター遺伝子多型)を報告した(Narita et al, Pediatrics 107 ; 690 : 2001)。従前、SIDSでは呼吸中枢へ投射する神経(セロトニン神経)が何らかの原因により病的に未熟であるとされてきた。今回の萌芽研究ではSIDS発症へのセロトニン系の関与をより明らかにするために、生体脳内セロトニンリアルタイム測定(微少透析法=マイクロダイアリシス法=)を用い、SIDS児の豊富な司法解剖経験のある研究分担者・那谷雅之らと検討した。生きたラットの頭蓋内にプローブを刺入、シリンジポンプで灌流し灌流液を5分毎に回収し、回収液中のセロトニン濃度(即ち脳の細胞外液中のセロトニン濃度)をECD-HPLC装置(電気化学的検出による高速液体クロマトグラフィー、エイコム社)にて測定する系をつくりだす。 本年度は生きた状態でのセロトニン動態を測定する系を確立することができた。今後はこの系を用い、研究代表者が作成してきた「縫線核(=セロトニン神経の起始核)未熟ラット」を用い、児が深い眠りに陥った時のことを想定した、吸気CO2濃度変化に対するセロトニン系の反応性の異常がないかどうかを検討していきたい。さらに今後、縫線核が病的に未熟なために吸気CO2濃度変化に対する反応性の異常が根底にあることを証明し、生後セロトニン神経の賦活化など新しい視点でのSIDS予防策を講じることを目指す。従って本研究は、独創的な発想に基づく、挑戦的で高い目標設定を掲げた芽生え期の研究といえる。
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