小児では、成人と比較して白血病治療後の生存期間が長期であるため、二次性白血病および癌の発症予防が重要な課題となっている。本研究では、放射線や抗ガン剤によるゲノムストレスの記憶に核内ドメインPMLボディがどのように関与しているかについて明らかにすることを目的としている。このため、PMLボディに関連する遺伝子の同定に取り組んだ。我々は転写因子Bach2が酸化ストレス誘導後にPMLボディ周辺の転写活性を特異的に抑制することを見いだしている。そこで、Bach2発現細胞での酸化ストレス誘導前後の遺伝子発現プロファイルを網羅的に解析し、6つの遺伝子の発現が酸化ストレス誘導後特異的に抑制されることを見いだした。このため、これらの遺伝子の核内局在とPMLボディの関連の検討を進めている。また、PMLボディとピストン修飾の関連については、抗PML抗体と抗メチル化およびアセチル化ヒストンH3抗体などのヒストン修飾抗体を組み合わせた多重免疫蛍光抗体法を用いて検討したが、PMLボディと特定のピストン修飾の明らかな関連は認められなかった。染色体DNA-PML相互作用可視化システムの確立のため、Green fluorescence proteinで標識下PMLを安定的に発現させる細胞をカナダのDavid Basset Jones博士から入手し、現在、HoechstやDAPIなどによる染色体DNAの蛍光標識と組み合わせたPMLとDNAの相互作用検出を試みている。一方、PMLボディ形成に重要な蛋白質翻訳後修飾であるSUMO化がゲノム損傷領域で活性化することを見いだし、現在論文投稿準備中である。
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