研究課題
母体糖尿病による胎児合併症のうち、先天奇形は死亡および罹病率に最も寄与するも疾患である。先天奇形を防止するためには、その発生機序を解明することが重要であると考えられる。近年、糖尿病とその合併症の成因に酸化ストレスが深く関与することが明らかになってきており、母体糖尿病による胎児奇形の発生機序についても、酸化ストレスの関与が示唆されている。本研究では、国内外を通して初めてin vivoの系を用いて先天奇形への酸化ストレスの関与や酸化ストレスのシグナリングに関する機序を解明することを目的とする。母体糖尿病による先天奇形の発生機序に関する検討の成果について概説する。生体内に広く分布する抗酸化物質であるthioredoxin(以下TRX)を過剰発現するマウス(TRX-tg)を用いて母体糖尿病における胎仔の先天奇形発症が抑制されることを確認した。またTRX-tg群では、実際にアポトーシスが野生型群より軽度であり、酸化ストレスの指標であるthiobarbituric acid reactive substances (TBARS)の産生が低かったことより、奇形発生には酸化ストレスが関連する可能性を示した。さらにTRX-tg群においてアポトーシスのシグナル上重要であるcaspase-3の発現が低く、先天奇形とアポトーシスの関連が明らかとし、昨年論文を投稿し、現在revision中である。今後、母獣に胎仔の器官形成期に抗酸化物質(TRX)を投与することによって奇形発生が予防可能かどうかを、引き続き検討する予定である。
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Current Women's Health Reviews 5
ページ: 220-224
Clinical Applied Thrombosis Hemostasis (Epub ahead of print)