研究概要 |
本研究では、先天的に皮膚が脆弱で外的刺激により容易に水庖を形成する遺伝病である表皮水庖症(EB)のモデルマウスであるCol17KOマウスを用い、mRNAのスプライシング過程で遺伝子変異を修復する治療法について検討した。Col17KOマウスは、エクソン2がPGK-neoに置換されており、治療用分子として、正常なCol17 exon2, 3を含みイントロン4に相補的に結合するmRNA発現ベクターを作成した。その際、イントロン4との結合部位(バインディングドメイン : BD)を、(1)313bp(エクソン4寄り)、(2)313bp(エクソン3寄り)、(3)BD1, 2がオーバーラップした511bpの3種作成した。その結果、いずれのBDを有する治療法分子においても、スプライシングの過程で外的に導入発現した正常なCol17 exon2, 3が組み込まれ、正常のCol17 mRNA、そしてCOL17タンパクが発現したことが確認できた。3種のBDの中では511bpのBD2が最も効率が良かった。Spliseosome-Mediated RNA Trans-splicing(SMaRT)として近年報告されている本手法は、全長のcDNAを導入する古典的な遺伝子治療に比較して(1)治療用分子が小さくてよい、(2)導入遺伝子(RNA)過剰発現されても正常以上にタンパクが産生されることがない、(3)優性遺伝性疾患にも有用である、などの利点がある一方、(1)治療効率が劣ることが多い、(2)これまでの報告は主に3'側の変異による検討が主である、という問題点が挙げられる。本研究で用いたCol17KOマウスでは、エクソン2がPGK-neoに置換されているため、これまで報告が少なかった5'側のtrans-splicingの有用性について検討でき、5'側においても治療効果がある事が示された。しかし、今後の臨床応用には、正常のCOL17タンパク発現量を増やすなど更なる改良が必要である。今後、EBに対する新規治療法開発に向けて治療効果改善について検討していきたい。
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