研究課題
萌芽研究
【目的】本研究では、統合失調症モデルとしてX線照射モデルを用い、このモデルで認められる統合失調症類似の障害がCD34陽性細胞の移植により改善するか否か、血管新生の程度と障害の改善との間に関連はあるか否かを明らかにする。今年度は、ラットのX線照射モデルの作成とその行動異常の評価を行うとともに、このモデルにおける脳血液関門(BBB)の異常の有無を免疫組織化学的に検討した。【対象と方法】(1)X線照射モデルの作成:SD系雄性ラット(8週齢)20匹を用い、ネンブタール麻酔下にラットの頭部を定位脳固定装置に固定し、側脳室と海馬歯状回を含む領域に5GyのX線照射を週2回の割合で、計6回行い、これを照射群(n=10)とした。X線照射を除き照射群と同様に処置した動物を作成し、偽照射群(n=10)とした。(2)行動学的評価:X線照射の3ヶ月後に、以下の評価を行った。(i)赤外線センサーを用いた行動量測定装置による基礎運動量の測定。(ii)ラットの社会的行動(臭いかぎ、追尾など自発的行動)に費やす時間の測定。(iii)聴覚刺激に対する驚愕反応の先行刺激による抑制(PPI)の測定。(3)組織学的評価:行動学的評価の終了後、動物をパラホルムアルデヒドで灌流固定し脳を取り出し、40-μm厚の冠状断凍結切片を作成した。前頭皮質と海馬における脳実質内のIgG様免疫反応を照射群と偽照射群とで比較した。【結果と考察】X線照射に曝露されたラットは社会的行動の低下とPPIで示される感覚運動系機能の障害とを示した。さらに、X線照射モデルの脳実質内においてはIgG様免疫反応が増加していた。この結果は、X線照射を受けた動物のBBBがIgGのような巨大分子(分子量15,000)を容易に通過させる状態にあることを示している。以上から、X線照射モデルの前頭葉と海馬ではBBBの透過性が亢進していることが示唆された。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
PLoS ONE 3
ページ: e2283
ページ: E3648