研究課題
萌芽研究
自閉症の病態ではセロトニン機能異常の重要性が指摘されているが、その発症基盤は明らかでない。本研究では、新しい技術In vivo cross-link法を用いて、セロトニン・トランスポーターの密度低下の原因に影響しているタンパク質分子群を網羅的に検索し、臨床症状との関連を多角的に検証することで自閉症の発症基盤の解明を目指す。平成20年度では、まず、セロトニン・トランスポーター結合タンパク質の同定に適したIn vivo cross-link法の条件検討を行った。マウスを厳密な時間管理下、経心臓的にクロスリンカーにて潅流固定し、すみやかに脳を摘出後、その組織をすりつぶしてホモジネートを作製した。クロスリンカーによってセロトニン・トランスポーターと結合タンパク質の複合体が保持されていることを、セロトニン・トランスポーター特異的抗体を用いたウエスタンブロット法によって確認した。続いて、この脳ホモジネートから複合体を回収するために適切なセロトニン・トランスポーター特異的抗体の選択を行った。選択した抗体と高親和性アフィゲル用いて脳ホモジネートから複合体を精製した。この複合体の中に、セロトニン・トランスポーターに結合することが知られているSyntaxin 1Aや14-3-3・・が含まれていることをウエスタンブロット法によって確認した。現在、この複合体を二次元電気泳動法で分子レベルに展開し、セロトニン・トランスポーターに特異的に結合する分子群を検索中である。本研究の手法によって見出される分子は、自閉症の新しい診断法や治療法の標的として利用できる可能性がある。この試みが成功すれば、自閉症にみられるセロトニン代謝異常の解明ならびに発達期のセロトニン神経を正常化するような自閉症治療薬の開発に道を開く。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
PLoS ONE 3
ページ: e3648
ページ: E2283
J Neurosci 28
ページ: 5756-5761