研究概要 |
本年度は、統合失調症のプロテオーム解析による網羅的発現解析を下記の如く進めている。性・年齢をマッチさせた統合失調症患者30名および対照健常者30名の末梢血よりリンパ球細胞を単離した後、エプスタイン・バールウイルスにより不死化させリンパ芽球様細胞株を樹立した。3週間の継代培養の後、タンパク質を抽出・精製した。増殖の優れない細胞株は解析対象から除外し、患者・対照群それぞれ29例について2D-DIGE法による発現量の比較解析を行なった。解析にはPDQuest Advanced Version 8.0(Bio-Rad)を適用した。 各群において発現の認められた平均スポット数は患者群1103±13.3個、対照群1103±16.2個であり、検出された全1174個のスポットについて発現量を比較検討した。両群間において、発現量に有意差の認められたスポット数は20個であり(Student's t-test, p<0.05)、そのうち、対照群に比して発現量が2/3倍未満あるいは3/2倍より大きいスポット数は2個であった。 今後の方針として、発現量に有意差の認められたスポット20個について、LC-MS/MSによるタンパク質の同定を行い、同定されたタンパク質についてはウエスタンブロッティング法により発現量の再検討を行う予定である。本研究で同定されたタンパク質は、統合失調症の発症脆弱性分子の有力な候補として大いに期待できるものである。次年度は、双極性障害を対象にしたプロテオーム解析を行い、統合失調症で得られた結果との確認を行う予定である。
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