研究課題
本研究では、ヒトの加齢に伴う脳の形態変化(萎縮)をベクトル場として表現する方法の開発とその評価を行った。形態変化をベクトル場として表現する方法としては、高精度の画像標準化アルゴリズム(ELAST)を用いた。ELASTを加齢形態変化の検出に適用する場合、前処理として必須な線形変換(アフィン変換)部分に加齢変化が含まれてしまい、得られたベクトル場にこの情報が欠落してしまう問題点があった。この問題を解決するため、初年度は、12パラメータの線形変換をベクトル場として表現し、非線形のベクトル場にくりこむ方法を開発した。これにより、個人差の大きい被験者どうしの脳画像の形態差を、ひとつのベクトル場で統一的に扱うことが可能となった。次年度は、前年度に開発した方法を実際の脳画像データに適用し、加齢に伴う脳萎縮を表現するベクトル場を計算で求め、その評価を行った。脳画像データとして、日本人健常者脳画像データベース(現有)の若年群データ(男性、20~29歳、N=109)及び高齢群データ(男性、60~82歳、N=119)を用い、(1)若年群の平均的な形の脳画像(若年群平均脳)、(2)高齢群の平均的な形の脳画像(高齢群平均脳)、(3)若年群平均脳から計算でシミュレーションした仮想的な高齢者の脳(模擬加齢脳)、(4)若年群から高齢群への脳形態変形ベクトル場(加齢変形ベクトル場)、をそれぞれ計算で求めた。模擬加齢脳は高齢群平均脳と視覚的評価でよく一致した。また、加齢変形ベクトル場が示した空間的変化は、脳室の拡大、大脳縦列の拡大、側頭葉の縮退といったこれまでの知見と一致し、加齢に伴う脳萎縮を表現していた。本研究では、加齢に伴う脳萎縮を空間の変形(変形ベクトル場)としてとらえ、どの部位がどの方向へどのように変形したかを表現するまったく新しい方法を開発した。また、脳画像に変形ベクトル場を適用することで、加齢変化を画像的にシミュレーションできる可能性を示した。
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