研究概要 |
マクロファージが関与する実験系を選定・作成するために、ヒト乳ガン細胞(MCF7, MDA-MB-231, BT-20, ZR-75-1)をヌードマウス(BALB/c nu/nu)へ移植したモデルを作成した。病理標本検索によりマクロファージに特異的な抗CD68および増殖・転移に関与する微小血管を特異的に認識する抗CD105モノクロナール抗体により免疫組織化学染色を行うことにより、マクロファージの浸潤が多く、かつ微小血管新生の認められる腫瘍(MDA-MB-231)を選択した。悪性腫瘍病巣での低酸素状態にマクロファージの関与が指摘されているが、乳ガンでは腫瘍内細胞の80%にまで達するとする報告もありヒト乳ガンモデルの作成は腫瘍内へ浸潤したマクロファージの機能を明らかにする上で有用である。誘導される新生微小血管は未熟であり腫瘍細胞の血管内浸潤が起き易く、血行性転移の経路としても重要である。撮像にはH20年度初頭に導入予定であった研究用3T-MRI装置の導入が遅れており、1.5T-MRI装置を使用した。しかしその信号低下を補う小動物専用コイルが使用可能となり、使用装置の制限は問題とはなっていない。また活性化されたマクロファージに良く取り込まれ、その活動を可視化できる造影剤としてまずSPIO製剤(Resovist, Schering AG, Berlin, Germany)を用いた検討を行ったが、活性化マクロファージへの取り込みは大量使用した場合でも必ずしも十分ではなく、むしろ非特異的な取込みの影響が大きいと考えられた。USPIO製剤は当初AMI-227 (Guerbet laboratory, Aulnay, France)で使用交渉を進めていたが、先方の都合で同種の製剤P904 (Guerbet)を使用することとなり、現在投与量や撮像パラメータ、画質の検討を進めている。
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