腫瘍へ浸潤するマクロファージをMRIにより可視化し、病理標本と対比する実験を実施した。MRI造影剤にマクロファージに取り込まれる鉄造影剤(約30nmのコロイド粒子、血中半減期5-6時間)を使用してTAMと低酸素状態、新生血管増生をMR画像と組織で対比・検討した。ヌードマウス(BALB/c nu/nu)にヒト子宮頚がん細胞(HeLa)を移植して約2週間前後に実験を実施。使用鉄造影剤量は300μmolFe/kgとし、その投与前と投与48時間後に1.5T-MRIシステムと72mmのサーフェスコイルを使用してT2*強調画像を撮像した(FFE TR/TE/FA=50/40/20 and 39/30/15、解像度:0.4x0.4x0.4mm)。最終撮像終了直後に腫瘍血管を描出目的でヘキスト33342青色素を静注して1分後にsacrificeした。腫瘍摘出後、MR断面に合わせて中央で割面を入れて急速凍結保存して、HE染色、鉄染色、F4/80(抗マウスマクロファージ抗体)での染色(FITC標識2次抗体を使用し緑色に発色)とDAPIでのcounterstaining有り(細胞核が青色に発色)・無し、HIF-1α染色(赤色に発色)の染色で評価した。腫瘍の大きさは10mm前後であり、造影剤投与前のMR画像では腫瘍変性に伴う大きな出血は認めなかった。造影剤投与後には腫瘍内部に限局性の低信号域が同定されたが軽微なものを主体としていた。病理画像では腫瘍辺縁・内部には腫瘍血管の増生があり、腫瘍血管から離れた100-300μmれた位置を中心にHIF-1αの染色が認められたのは当初の予測通りであった。しかし抗マクロファージ抗体・鉄染色で陽性を示す細胞は弱拡大視野内に数個と極めて少なく、当該腫瘍系ではTAMの浸潤が少ないとともに、その活性も低下しているのではないかと推察された。
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