虚血発症直後、壊死により不可逆的に進行する梗塞巣(虚血中心:core)に加えて、主に虚血周囲部(penumbra)で起こるアポトーシスによって梗塞巣は拡大していく。我々はS100Bの研究をとおしてアストロサイトから活性型アストロサイトへの変化がニューロンの遅発性アポトーシスの発生に深く関与することを明らかにしてきた。活性型アストロサイトへの変化を抑制する脳保護薬も開発されつつあり、今後の応用には画像による評価と活性化アストロサイトの相関を知ることが重要である。MRIは脳神経疾患では必須の検査装置である。脳保護薬の開発・脳保護のメカニズムの解析・治療効果の評価には、S100Bの発現、microgliaでの免疫機構の発現などの基礎的検討に加えて、MRの技法でこれらの組織学的背景がどのような画像として表現されているかを検討する必要がある。今年度の研究にて、椎骨動脈と頸動脈の4血管の閉塞と再開通を行って脳虚血モデルラットを作製した。海馬を中心に遅発性の壊死が発生するモデルである。脳虚血後に経時的にラットから、髄液と血液サンプルを採取して、サイトカインの変化を測定した。脳を病理標本化して、S100B発現の分布を免疫染色で確認した。予備的にMRによる観察をおこなった。24時間前にマンガンを投与して、虚血部のT1緩和時間の短縮を測定した。次年度にさらに測定数を増やして、より多角的な画像検討を行い、サイトカイン・S100Bの変化と対比する。
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