研究概要 |
われわれはこれまでに手術・抗癌剤・放射線治療をすでに行われた28例の進行消化器癌患者に対して成熟樹状細胞と癌抗原MAGE-3由来HLA-A2402またはA0201拘束性ペプチドを用いた癌ワクチン療法を実施した。全症例において重篤な副作用を認めず、腫瘍マーカーの改善は40%に認め、MR以上の腫瘍縮小を12%に認めた。免疫学的解析の結果Th1/Th2の改善を認め癌抗原MAGEに対する細胞傷害活性を認めた。PSの改善、癌性痩痛の軽減を30%の症例に認めた。これらの症例の中から、治療前に癌部の凍結標本が得られた症例10例から、Laser capture microdissectionを実施し、周囲の間質を含まないように癌部だけを選択的に摘出し、RNA抽出を行った。これらの標本を用いてマイクロアレイ解析を行い、治療前標本を用いた、治療効果有効症例、無効症例における癌部の遺伝子発現差を検討した。解析した10症例のうち癌ワクチン有効症例は3例、無効症例は7例であった。 有効症例で共通して発現上昇、また発現低下する遺伝子のうち各上位10遺伝子を選択した。これらの遺伝子発現を、標本が得られた10症例に対して定量的RT-PCRを実施した。各10遺伝子(合計20遺伝子)の発現差を検証した結果、9遺伝子にマイクロアレイ解析との相関を認めた(それぞれの代表HLA-class I complex,IL-10)。これらの9遺伝子を用いて治療効果有効、無効症例との相関を解析した。解析可能な症例数が3例、7例と統計学的に有意な差を示すには不十分であったために相関間関係をスコア化するには不十分であった。本研究では候補9遺伝を選択でき、これらの遺伝子発現が癌ワクチン治療評価予測システムに関与する可能性が示された。
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