研究課題
1)ワクチン療法の実施:先進医療の承認を受けた後に合計28例の患者に癌ワクチンを実施した。プロとコールはこれまで同様で、HLA-A2402または-A0201を有する、標準的治療を全て実施した進行再発食道癌、胃癌、または大腸癌患者である。2)腫瘍献体の凍結標本を作製し、Laser Microdissctionを用いて患者の浸潤CTL,マクロファージ、樹状細胞、腫瘍細胞の単離を行った。ワクチンを実施した症例の多くは、腫瘍を直接採取することができず(腹腔内あるいは肺深部に癌が存在するため)採取ができたのは8例であった。採取方法は1例が手術による腫瘍摘出、他の症例は針生検による採取であった。可能な限り、それらの標本からLMDを実施、上記成分の単離を行った。3)それらの臨床サンプルからRNAを抽出しマイクロアレイを実施し、発現プルファイルを作成し比較検討した。4)患者背景としては、治療を実施した全ての患者は、最終的には死亡した。Recist基準で評価すれば、全ての症例はPDと評価されるが、近年ASCOなどによって癌ワクチン治療においてはPDあるいは非PD、すなわち長期観察しSD以上が保たれれば治療は有効である、という概念が導入されつつある。この基準を当てはめて、上記8例の解析を進めた。改善ありが3例、改善なしが5例であった。各項目について統計解析を用いて評価したが、研究前に期待していたCTL、マクロファージに優位な差を示す遺伝子発現は認められなかった。腫瘍細胞において、MHC class I関連分子発現が減少しているものは予後が悪い傾向があることが示された。これは、腫瘍細胞によるclass I発現低下が癌の免疫監視機構からの逃避メカニズムであるために、一貫性がある結果だと判断される。
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