研究概要 |
大腸癌の外科治療後の予後を規定する主たる因子は肝転移、肺転移あるいは骨転移などの遠隔転移である。そこで、大腸癌外科的治療後にこれらの遠隔転移を来すハイリスク症例を選別できれば、ハイリスク症例に対して積極的な術後補助化学療法、あるいはintensiveな術後フォローアップを行うことにより、大腸癌外科治療後の予後の向上が期待できる。しかし、現在までに国内、国外何れの報告においても、大腸癌外科的治療後の血行性転移を高精度で予測するマーカーは確立されていない。今回、DNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析により、大腸癌の外科手術後に血行性転移を来す症例を予測し、大腸癌に対するテーラーメイド治療を可能にすることを目的とした。 外科的切除が行われ、手術時に切除された大腸癌組織が直ちに凍結して保存されていて、術後5年以上経過観察されて遠隔転移の有無が確認されている症例のうち、大腸癌組織を用いた遺伝子研究に対してインフォームドコンセントが得られている90症例を対象とした。対象症例の凍結標本よりSepazolを用いtotal RNAを抽出し、T7-oligo(dT)24primerを用いcDNAへ逆転写後、biotin標識cRNAを合成し、Affymetrix社のGeneChipにハイブリダイズして大腸癌発生及び転移や薬剤感受性に関連が考えられる約54,000種類の遺伝子発現解析を行った。肝転移の認められた24例と認められなかった66例の間で有意に発現の差のあった88遺伝子を抽出した。この88遺伝子を用いて、肝転移の予測式を作成した。予測式を作成する際には、GeneSpring(sil icon genetics社)を用い、leave-one-out法の一種であるKNN法にて行った。この結果、予測精度68%で血行性転移の有無の予想が可能であった。今後は、症例数を増やして予測精度を高め、さらに独立した症例により予測式のvalidationを行っていく予定である。
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