消化管間質腫瘍(GIST)のうち約90%が、消化管ペースメーカー細胞カハール介在細胞(ICC)において発現しているc-kit遺伝子の機能獲得型突然変異によるICCの異常増殖に起因していると考えられている。GISTの確定診断において生検組織の抗c-kit抗体による免疫染色がおこなわれている事がら、抗c-kit抗体を画像診断用のプローブとして利用できれば非浸襲的にGIST判定が可能となる事やFDG-PETによる検出が困難な再発の初期診断にも有用となることが考えられる。本研究ではヒトGISTの新規画像診断法の確立を目指し、GISTの診断マーカーであるc-kitに対する抗体を用いた画像診断用PET/SPECT用プローブを開発することを目的とし、本年度の実施計画として以下の4項目を掲げ研究を行った。1、ヒト機能獲得型突然変異c-kitの発現ベクターを構築し大量培養に適したHEK293細胞に導入して恒常的に機能獲得型変異c-kitを発現する細胞株を樹立し以降の実験に使用する。2、画像診断プローブとして最適な抗c-kitモノクローナル抗体の非標識抗体による選択。3、PET/SPECTイメージング用の放射標識方法と核種の検討。4、細胞移植によるヒトGISTモデルマウスを用いた放射標識抗体の体内動態の評価およびPET/SPECT撮像による画像診断の可能性の検討。 本年度は1および2については計画通りに実験を遂行できたが、3および4についてはPETイメージングの検討にはおよばなかった。しかしSPECTイメージングについてはマウスモノクローナル抗体(IgG)をI-125およびIn-I11にて標識し、細胞による基礎検討、モデルマウスによる体内動態の確認、SPECT撮像による腫瘍の画像化に成功した。この結果はGISTに対する治療の効果判定や予後のフォローアップ、特に初期再発性GISTのようにFDGの集積が見られない腫瘍に対して高い有用性を示したと思われる。また、腫瘍への特異的集積が認められたことから標識する放射性同位元素を細胞障害性のもの(ベータ線放出核種)に変えることにより、特異的放射線治療(内照射療法)の可能性も示唆された。
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