特定のガンに対する治療の効果判定や予後のフォローアップには、それぞれのガンに特異的な画像診断プローブの開発が期待される。GIST細胞は多くがc-kitを高発現しており、抗c-kit抗体を画像診断プローブとして利用できればGIST患者の診断への貢献が大きく期待される。そこで本研究では抗c-kit抗体のプローブ化を試みた。 昨年度までに、モノクローナル抗体(IgG)を用いた基礎検討を終了し、画像診断プローブとして利用可能な抗c-kitモノクローナル抗体を選出、担ガンマウスを用いた放射標識IgGの体内動態での腫瘍への高集積をみとめ、SPECTイメージングによる大腿部への移植腫瘍の画像化に成功し論文報告した。 昨年までの研究結果から、IgGは血液、肺、肝臓、腎臓への生理的集積が高く、1グラムあたりの放射能集積量は腫瘍より低いものの、イメージング上は肺や肝臓への集積が目立つ結果となり、それらの生理的集積の低減が必須と考えられた。そこで本年度は、臨床応用へ向けた抗体の低分子量化を試みanti-c-kit-antibody-Fabを用いてIgGと同様の基礎研究をおこなった。 放射標識-Fabを細胞で評価した結果、結合率がIgGよりも劣り、非標識抗体を加えた競合阻害実験から求めた結合親和性もIgGより低下した。細胞での局在を継時的に調べたところ、放射標識抗体は内在化画分も認められるものの、早期に細胞膜から乖離する画分が多いことも明らかとなった。担ガンマウスでの体内動態の結果、腎臓への集積が圧倒的に高くなったが、血中クリアランスは非常に早く高い腫瘍/血液比を得ることができた。anti-c-kit-antibody-Fabプローブは、c-kit高発現タイプの小細胞性肺癌イメージングにも展開した。今後はGISTをはじめとする腫瘍への分子標的内照射療法への応用が期待できる結果となった。
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