ウサギを用いて頸動静脈吻合バイパスモデルにおいて、ドキソルビシン含浸徐放ゲルを、吻合部周囲に留置して、吻合部新生内膜肥厚抑制効果を検討する研究を行った。 ウサギとラットをエーテル麻酔科に頸動脈を露出し、外頚静脈を採取し、同側の頸動脈の中枢側、末梢側に吻合し、その間の頸動脈を結紮し、バイパスモデルとした。ハイドロゲルシートを叙放剤として用い、それにドキソルビシンを包含させ、徐放効果を評価した。組織評価にはα-SM-actin/desmin染色、TUNEL染色、ECG染色の染色を行い、内膜中幕径比の測定により、新生内膜肥厚抑制効果の評価、内膜新生由来の検討を行った。 4週後、犠死させバイパスを摘出し、吻合部、中央部、それらの中間部の5か所の断面標本を作製し、内膜中膜比の検討を行った。その結果、ハイドロゲルシートを用いた群で、ハイドロシートを用いない群に比べて吻合部における内膜肥厚の抑制が認められた。ドキソルビシンを除放的投与の効果が示唆された。TUNEL染織では両群に差は認められなかったが、叙放群の方でTUNEL陽性細胞が多い傾向にあった。ドキソルビシンは内膜増殖抑制効果を有することは既知であったが、その叙放投与効果に関して新しい知見をえた。 この結果は今後末梢血管の動脈硬化性疾患や、冠動脈疾患における静脈グラフトバイパスにおいて、その開存性を含めた長期化成績の向上に寄与する所見であった。
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