本研究は、肺癌、特に進行・再発肺癌で多く見られる胸膜播種・悪性胸水に対し、新規DDSであるCHP(特にアミノ基を付加したCHP-NH2)を用いた癌の標的治療の検討である。平成20年度は主に、vitroでの検討を行った。具体的には1)8種類の肺癌細胞を用い、蛍光半導体物質(Qdotを使用)を内包させたCHP-NH2による癌細胞への取り込みを蛍光顕微鏡にて確認した。2)前記8種類の癌細胞を対象とし、Cisplatin、Carboplatin、Paclitaxel、Docetaxelを内包させたCHP-NH2をを用いその細胞障害効果をWST-1アッセイで確認し、そのIC50を比較検討した。その際、抗癌剤とCHPの混合時間、混合温度など至適条件も検討した。3)ルシフェラーゼ遺伝子を導入した癌細胞をマウスに移植し、胸膜播種モデルを作製。In Vivo Imaging System (IVIS)にて経時的な変化を観察した。<結果>1)Qdot単独群とCHP-NH2内包群を比較したが、いずれの細胞もCHP-NH2内包群が著明に細胞への取り込みが亢進していた。2)4種類の抗癌剤を用いて、抗癌剤単独での細胞障害率、CHP-NH2内包抗癌剤での細胞障害率を比較したところ、DocetaxelでCHP-NH2内包群が有意に細胞障害率が増加していた。3)複数の癌細胞にルシフェラーゼ遺伝子を導入し、マウスの胸腔内に移植したところ、胸膜播種モデルを作製することができた。また、これはIVISで経時的観察が可能であった。<平成21年度の予定>平成21年度は主にマウスモデルを用い、CHP-NH2に内包させた抗癌剤を用い、その効果、副作用等を検討していく予定である。
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