1. 三叉神経痛(痛覚過敏・アロディニア)モデル動物の作成と行動学的評価:[福田] 口腔内からのアプローチによって、右の三叉神経の第II枝の感覚神経の末梢部位(眼窩下神経)を組織反応性の強い吸収糸で圧迫結紮し片側の三叉神経線維の圧迫傷害モデルを作製した。von Frey filamentによる顎顔面領域への刺激に対する引っ込み反射(痛覚の指標)の閾値と触刺激(0.4g)に対する行動評価による痛覚スコアを傷害側と健常側で比較して、各々痛覚過敏とアロディニア(触刺激による痛覚反応)を判定した。これらの評価を術前1週から術後4週まで毎週1回行った。痛覚過敏とアロディニアは術後1-3週間持続したが、4週後には回復した。 2. 三叉神経痛モデルにおけるKCC2とNKCC1 mRNAの発現変化:[熊田、福田] 1. で作製した三叉神経痛モデルの脊髄路核尾部と神経節でのKCC2とNKCC1のmRNA発現の変化を術後1-4週にin situ hybridization法を用いて半定量した。KCC2の発現は脊髄路核内の中継ニューロンで、痛覚閾値の低下や痛覚スコアの増加の時間的経過と良く一致して傷害側で術後1-3週の間低下し、4週後には回復した。従来の我々の報告どおり、KCC2の神経節での発現は認められなかった。NKCC1の発現は脊髄路核尾部では変化無く、傷害側の三叉神経節の一次ニューロンで時間的経過と一致して増加していた。細胞体の直径による神経節細胞の分類ではAβとC線維の細胞体でNKCC1発現が増加していた。
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