1.三叉神経痛モデルにおけるKCC2とNKCC1 mRNAの発現変化:[熊田、福田] 右の三叉神経第II枝の感覚神経の末梢部位(眼窩下神経)を、組織反応性の強い吸収糸で圧迫結紮して作製した三叉神経痛モデルを用い、前年度に引き続き、脊髄路核尾部と神経節でのKCC2とNKCC1のmRNA発現の変化を、行動評価を行った直後(術後1-4週)にin situ hybridization法を用いて半定量(銀粒子数/放射線感光シグナル強度)した。アロディニア、痛覚過敏に一致して傷害側の脊髄路核尾部でKCC2の発現が統計学的有意差をもって低下し、神経節ではC線維とAβ線維の感覚神経細胞体でNKCC1の発現が統計学的有意差をもって増加することを確認した。 2.三叉神経痛モデルにおけるKCC2とNKCC1蛋白の発現変化:[古川、福田] 三叉神経痛モデルの脊髄路核尾部でのKCC2の蛋白局在の変化を、行動評価を行った直後(術後1-4週)に細胞質蛋白のNeuNに対する抗体と抗KCC2抗体で2重染色し、共焦点顕微鏡を用いて解析した。アロディニア、痛覚過敏に一致して傷害側の脊髄路核尾部の中継細胞で、膜に局在するKCC2蛋白が減少した。中継ニューロンへの一次感覚線維終末におけるシナプス前作用(primary afferent depolarization)にNKCC1が関与する可能性を検討するため、さらに、一次感覚ニューロン特異蛋白のperipherinに対する抗体と抗NKCC1抗体による2重染色を行って、脊髄路核尾部の一次感覚線維終末でのNKCC1の変化を検討したが、抗体の特異性・感度が十分でなく、結論は出なかった。別の抗体を使用する必要があると判断した。しかし、神経節ではmRNAの結果と一致して、C線維とAβ線維の感覚神経細胞体でNKCC1蛋白の発現が増加していた。
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