1. 三叉神経痛モデルにおける異常神経回路の光生理学的機能評価: モデル作成の際に眼窩下神経の結紮部位にDiIを取り込ませ、傷害線維を蛍光標識し、眼窩下神経の走行に沿った脳幹水平断スライス標本を作製し、脊髄路核尾部の一次感覚線維を同定した。水平断脳幹スライス標本を作製し、膜電位感受性色素JPW1114を細胞膜に吸着させ、膜電位光学測定を行った。一次知覚神経の電気刺激による脊髄路核のシナプス後電位と活動電位の空間伝播を2次元的に可視化し、傷害側での興奮伝播の拡大と、bicucullineによる抑制を確認し、二次ニューロンでのGABA作用逆転による過剰興奮神経回路の形成を証明した。Ca^<2+>-free溶液で還流し、シナプス前線維の興奮のみを記録して、bicucullineやbumetanideによる作用を確認して、介在GABAニューロンを介したprimary afferent depolarizationが一次神経終末でのシナプス前抑制に寄与することを示した。傷害側では一次神経終末でもNKCC1増加による[Cl^-]_i上昇によりGABAがCl^-流出による興奮を惹起し、シナプス前促進に転じていると思われた。 2. 三叉神経節におけるGABAによる痛覚モデュレーションの証明にむけた試み: 三叉神経脊髄路核中継ニューロンでの上記の変化に加え、さらに一次感覚ニューロンの神経節細胞体でもNKCC1が増加していた。感覚線維の電気刺激で三叉神経節内でGABAが放出されることをGABAイメージング法で証明した。すなわち、三叉神経節細胞が合成するGABAによるautocrine/paracrine作用で痛覚伝導が促進され、アロディニアに関与するとの仮説と矛盾しない結果であった。
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