幹細胞研究の進展に伴って、脳腫瘍幹細胞(brain cancer stem cell; BCSC)の存在が証明され、抗癌剤や放射線治療に抵抗性の細胞であるため、重要な治療標的として解析が急速に進められている。しかし、現在まで確立されたBCSC分離・精製法がないため、BCSCの分子制御機構の詳細は不明であり、またBCSC特異分子の発見には至っていない。そこで、本年度は、BCSC特異的遺伝子の単離同定とその発現調節機構の解明を目指して、第一に様々なグリオーマ細胞株およびグリオーマ組織からBCSCを分離してその性状解析を行った。その結果、グリオーマ細胞株(SK-G-1)のHoechst33342排出能の高いSide Population (SP)分画からBCSC細胞を分離し(論文投稿中)、また、グリオーマ患者の腫瘍検体から長期培養可能なBCSC細胞株の樹立に成功した。これらの細胞が、in vitroで神経幹細胞培養条件におけるスフェア形成能、自己増殖能、および多分化能を有すること、さらに免疫不全マウス(NOD-SCIDマウス)脳内に細胞移植後の腫瘍形成能を検証した。第二に、BCSC特異的遺伝子を単離・同定するため、メチル化感受性制限酵素を用いたRLGS (Restriction Landmark Genomic Scanning)法を行なった。その結果、染色体DNAのプロモーター領域に存在するCpGアイランドが、正常脳組織と比較して、グリオーマにおいて高頻度にメチル化されているBCSC関連遺伝子を同定した。
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