研究概要 |
ヒトゲノムには多様性のあることはよく知られているが、最近SNPやマイクロサテライトなどの既知の多型に加えて、遺伝子コピー数に想像以上の多様性があることが示され、コピー数多型(以下CNV)と呼ばれ脚光をあびている。感受性遺伝子の解析を行う上で、ごく最近その全体像が明らかになってきたCNVは、SNP以上に疾患の病態に強い効果を呈する例がある事実が報告されてきているが、未だ、臼蓋形成不全症の感受性遺伝子の解析について、CNVの関与に着目した研究は行われていない。発生分化に伴うDNA複製に際して、CNV領域では遺伝子や染色体の重複、欠失、逆位などが頻繁に起こりやすいこと、臼蓋形成不全症は中胚葉系の分化発育異常の可能性があることから、臼蓋形成不全症の原因として、遺伝子コピー数の異常が臼蓋形成不全症発症の主要な原因である可能性は高く、世界最高水準のCNV解析法を用いた遺伝子コピー数の網羅的・系統的解析技術を利用して、臼蓋形成不全症における新たなゲノム異常を明らかにすることを目的として、本研究を計画した。 平成20年度においては、十分なインフォームドコンセントの後に、臼蓋形成不全症患者20症例の血液検体の収集、DNAの単離、臨床情報データベースの構築を行った。さらに臼蓋形成不全症におけるコピー数異常領域の探索を行うために、既に収集したDNAをCNV解析チップを用いて、CNV領域の直上に位置するマーカーの正確な蛍光強度を直接測定し、これまで同定困難であった多くのCNV構造異常の検出を行なった。今回CNV解析チップの解析により、従来のCNV解析法でカバーしていたCNVセグメントの5-50倍に匹敵する15,000以上のCNVセグメントを55,000個のCNVプローブで高感度に検出し、臼蓋形成不全症におけるCNV異常を探索した。結果は有意差をもってCNV異常を示す領域が認められた。今後はさらに症例数を増やして、今回の異常を示した領域を中心に重点的に解析を続ける予定である。
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