ヒトゲノムには新たなゲノム構造異常としてCopy Number Variation (CNV)の存在が注目され、ゲノム上の様々な遺伝子全体および制御領域を含むユニット数の多様性を示すこのDNA多型が、ヒトゲノム上の多くの遺伝子の遺伝子配列または遺伝子の制御に影響を与えることが報告されてきているが、未だ、臼蓋形成不全症の感受性遺伝子の解析について、CNVの関与に着目した研究は行われていないので本研究を計画した。 CNV領域は、従来のtagSNPなどによるゲノムワイドSNP解析ではカバーできないゲノム上のブラックホールであった。本研究では、すでに収集した臼蓋形成不全症患者20名のDNAをCNV解析チップ(deCODE Illumina CNV Beadchip)で解析し、これまで同定困難であった多くのCNV構造異常の検出を行った。これらのCNV異常は疾患と直接の関連性を持つ可能性が極めて高く、このCNV解析チップの解析により、有意なマーカーを調べたところ561マーカーが存在した。本年度はさらに、Segmental Maximum A Posteriori Approach to Array-CGH Copy Number Program (SMAP、隠れマルコフモデル)を用いて臼蓋形成不全症特異的CNVの探索を行った。このSMAPプログラムを用いて、ヒトゲノムのCNV構造変化をゲノムワイドに解析したところ、患者のみにて検出された候補ゲノム構造変異領域が10ヵ所、およびコントロール群と比較して患者にて高頻度にみられた候補ゲノム構造変異領域を9ヵ所検出した。研究の次の段階として、これらマーカーを候補ローカスとして、ゲノム変異構造のさらなる領域の絞り込みおよび検証解析を行うため、より高密度にプローブを配置したカスタムタイリングアレイを設計・合成して、より詳細な解析を進める予定である。
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