ヒトゲノムには新たなゲノム構造異常としてCopy Number Variation (CNV)の存在が注目され、ゲノム上の様々な遺伝子全体および制御領域を含むユニット数の多様性を示すこのDNA多型が、ヒトゲノム上の多くの遺伝子の遺伝子配列または遺伝子の制御に影響を与えることが報告されてきている。しかし未だ臼蓋形成不全症の感受性遺伝子の解析について、このCNVの関与に着目した研究は行われていないので本研究を計画した。昨年度の1次スクリーニングのゲノムワイドCNVビーズチップ解析により、臼蓋形成不全症の病態に関与が示唆されるゲノム構造変化を19領域検出した。 今年度は1次スクリーニングで高頻度にCNVが認められた疾患感受性候補領域について、候補領域に特化した高密度オリゴヌクレオチドマイクロアレイを作製し、患者32名、健常者16名についてCNVタイピングを行い、moving average法により検証解析を行った。結果は患者で高頻度に認められ再現性のあるゲノム構造変化を次の様に認めた。1つは第1番染色体のゲノムポジション10.2Mb周辺にゲノム欠失を認めた。このゲノム変化はKinesin family member 1B(KIF1B)遺伝子を含む領域であり、患者32名中11名で認め健常者では認められなかった。2つ目は第7番染色体のゲノムポジション132.35Mb周辺にゲノム欠失を認めた。このゲノムの変化はHomo sapiens coiled-coil-helix-coiled-coil-helix domain containing3(CHCHD3)遺伝子を含む領域であり、患者32名中6名で認め健常者では認められなかった。これらの遺伝子は臼蓋形成不全症の発症に関与することが示唆され、今後は他の候補領域を検証するとともにさらに症例数を増やしてより詳細な解析を進める予定である。
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