本研究の目的は、肥満と炎症の関連について解明するために、肥満関連因子であるレプチンに注目し、レプチンあるいはレプチン受容体欠損マウス及びマウスレプチン蛋白を用いて、内外のレプチン環境を操作し、コラーゲン誘発関節炎の発症進行に与える影響について検討することである。 研究内容 1.レプチン関連ミュータントマウス(レプチン欠損、レプチン受容体欠損マウス)に抗II型コラーゲン抗体カクテルを投与し、誘発性関節炎を生じさせ、野生型との比較を行ったところ、ミュータントマウスでは、関節炎の発症進行が有意に抑制された。また、膝関節の組織像においても、軟骨の傷害が軽減され、破骨細胞の出現も減少していた。2.レプチン欠損マウスとその野性型に関節炎を誘発し、外部よりマウスレプチン蛋白を投与した。すると、レプチン欠損マウスでは野性型と同レベルの関節炎が誘発され、野性型ではレプチンの投与にて、さらに関節炎の増悪が認められた。関節の組織でも炎症に比例した、軟骨傷害が認められた。 3.正常マウスに可溶性レプチン受容体免疫グロブリン結合体を投与して、レプチンシグナルをブロックした上で、上記同様に関節炎を誘発すると、やはり炎症の進行が抑制され、組織上の軟骨傷害も抑制された。 以上の結果から、レプチンは食欲抑制作用だけではなく、関節炎を発症進行させる因子の一つであり、軟骨や骨傷害にも関連している物質であるという結論を得た。しかし、この結果は極端な条件下で得られたものであるので、より人の肥満に近似した状態である、レプチンに対し抵抗性を獲得した自然肥満モデルマウスを作成し、関節炎の発症進行への影響について検討し、「肥満傾向の関節リウマチ患者においては、炎症の程度が軽い」という臨床的実感を科学的に証明する計画を進行中である。
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