研究概要 |
脊柱の黄色靱帯は、脊柱管の後方にあって第2頸椎から第1仙椎までの椎弓間を連結し、脊柱管後壁を椎弓と共に構成し、脊柱の生理的運動性を保持する機能を有し、前屈で伸展かつ制動し、後屈で収縮する。このように生理学的に極めて重要な靱帯である一方、肥厚、石灰化、骨化を起こし脊髄圧迫の原因病巣となる。これまでの研究では、遺伝子的背景、骨化巣に注目した組織学的・分子生物学的検討が数多くなされてきたが、どれも解決の糸口になつていない。共同研究者である中間は、黄色靱帯特有の微細構造の違いがあると考え、頸椎黄色靱帯の超微細骨像と靱帯細胞のアポトーシスについて報告し、脊柱靱帯骨化症における黄色靱帯には構築学的な違いが存在することを証明してきており(Nakama S, et al. Med Mol Morphol.2005, Nakama S, et al. Med Mol Morphol.2006)、本研究では構造的な違いに焦点を当て、骨化モデルを人工的に作製し、骨化メカニズムを証明することを検討した。 平成20年度は黄色靱帯に対する細胞親和性を把握するためにin vitroで骨髄間葉系細胞を黄色靱帯、脂肪、腱、筋肉等の各組織と共培養し比較した。黄色靱帯が他の組織より間葉系細胞親和性が高いことを確認できたが、骨化のメカニズムを解明するために間葉系細胞と各組織を骨分化誘導培地で培養することにより、靱帯の骨化が起こるか確認したが、靱帯内に骨芽細胞を誘導・分化できなかった。骨芽細胞と共に共培養したものでは一部骨化様のものが見えたが、黄色靱帯に付着している骨片と判別がつかなった。そこで、次年度では細胞マーカー遺伝子を導入した骨芽細胞を使用し確認することを検討している。また、黄色靱帯を骨化誘導するためには別の要因が考えられ、環境因子を変更して実験することを検討している。
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