揮発性麻酔薬として、ハロタンを取り上げ、ハロタンに対するモノクローナル抗体を得るために、次の三つの着想に基づいて抗体の作製を試みることを目的とした。 (1)分子を大きくし、抗原性をもたせ、かつ、麻酔作用を持たせないために、蛋白質と結合した揮発性麻酔薬の代謝物を抗原とすること。 (2)"第一のスクリーニング"として、ハロタンの代謝物を抗原としているが、ハロタン-蛋白質複合体のうち、ハロタンの分子構造部分をエピトープとした抗体を選択する。 (3)"第二のスクリーニング"として、揮発性麻酔薬は低温ほど液体に溶けやすいという物理的特性に基づき、低温条件でより抗原抗体の結合を認めたものを選択する。 平成20年度内に、ラット肝ミクロソーム分画にハロタンを暴露し、ハロタン-蛋白質複合体を得た。これを抗原として感作したマウスから脾臓細胞を摘出し、ミエローマ細胞と細胞融合させた。次に、ラット肝ミクロソーム分画で抗原抗体の結合を認めず、ハロタンに暴露された肝ミクロソーム分画で抗原抗体の結合を認めたハイブリドーマのクローンを選別、すなわち第一のスクリーニングを行った。現在は目的とするクローンを得ることはできていないが、引き続き試験数を増やすことにより、目的のクローンを手に入れることができると考えている。将来的に揮発性麻酔薬に対するモノクローナル抗体は、揮発性麻酔薬の麻酔作用の拮抗、効果部位特異的な麻酔薬の投与、効果部位を限定するといった新しい麻酔薬の開発のきっかけとなり得ることが期待できる。
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